MSA-003D-1_ネモ
   (アニメ 機動戦士Zガンダム)
2004年9月に当サイトで開催した第三回MSBガンプラコンテスト出品作品
このコンテストの特徴(?)として妄想設定付という厨丸出しのオマケがあった(笑)

マークU(HG)+ジムコマンド(HG)+百式(旧キット)+ネモ(旧キット)という滅茶苦茶仕様。武装は1/35スコープドックのヘビィマシンガン。
個人的には結構気に入っている。というか試作機やカスタム機よりもあくまでも量産機を強化(ヴァージョンアップ)していく方向性の方が好きだからである。そういう意味ではネモにはもっと活躍して欲しかったし、リックディアスとネモのハイ・ロー・ミックス配備・運用は非常に好きだった。
ま、作中ではヤラレメカでしかなかったけど・・・
MSA-003D-1
ネモD-1型・高機動強襲型




機体解説


MSA-003ネモ 主にエゥーゴで使用されたアナハイム製MSである。
RGM-79RジムUに代わる連邦軍次期正式採用MSとして開発された機体であったが、ティターンズとエゥーゴの武力衝突に端を発した『グリプス戦役』と呼ばれる内戦によって本機の開発は二転三転する。
より強力なMSの開発、試作機の乱発により本機も当初予定されていた計画とは別にネモU計画、さらにはネモV計画へと発展。それは開発費・生産コスト急増へとつながることとなった。

本機の機体コードは『MSA-003D-1』
上記計画とは別に進められたネモ改修計画の一環で計画・配備された機体である。主に推進系の強化による機動性向上を目指した機体であり、既存のシステムを流用することによってより安価に開発された。
D型は既存機体(A型)の全般的な性能向上を目指した改修計画による試作機(C型)のうち、価格高騰を覚悟してガンダリウムガンマ系素材を装甲材質に採用したC-2型に追加兵装を加えることによって性能の部分的特化を目指した機体である。必要とされる機能に重点を絞った性能向上を図り、様々な状況下での優位性確立を目指した。強襲型・偵察型・重武装攻撃型等の目的別ユニットを開発、機体各所にハードポイントを増設したC-2型からの改修機(これをD型とする)に装備・運用する計画であった。
本機D-1型は高機動強襲型として計画されたバックパックと脚部追加補助推進ユニットから構成される01型ユニットを装備したD型ネモである。

『グリプス戦役』における最終局面『メールシュトローム作戦』と、それに付随する一連の戦闘にエゥーゴ所属部隊の1機として実戦参加。
その所属部隊、通称『デルタチーム』の中隊指揮官機として『ジャイケル・M大尉』によって運用された。



パイロット解説

1年戦争終戦後の戦い、暗礁空域の戦闘においてジオン公国軍残党部隊として連邦軍掃討部隊と交戦・行方不明となった元ジオン公国軍ジャイケル・M少佐。
損傷機体で漂流中のところを救出され捕虜となった少佐は、軍事裁判で軍刑務所送りとなる。
戦後復興に伴う特赦の結果、比較的早く仮出所となった元ジオン兵たちの内、新鋭機搭乗員・テスト部隊所属員・MS技官の多くが民間の軍需企業に採用されることとなった。彼もまたアナハイム社にテストパイロットとして採用された一人である。
アナハイム社での業務は新型機・旧型機問わずあらゆる機体の運用を手掛けデータ収集を目的とした部門であり、そのまま連邦軍への出向扱いとなった。
『デラーズフリートの反乱』を契機に連邦軍内部の大規模な組織改編が行われ、その際に多くの民間企業から出向しているパイロットが連邦軍への所属を命じられている。彼もまた例外ではなかった。
最終的に所属した『第14教導MS大隊』は『ティターンズ』の教導訓練任務と試作機を含む各種MSの運用試験を目的としていたが、この運用試験部隊(大隊内の一部門)が後に『エゥーゴ』の実戦部隊の中核となったのは皮肉な結果である。
『グリプス戦役』後半、MSA-003ネモ改修計画の試作機群で編成されたエゥーゴの実戦部隊『デルタチーム』が編成される際にMS中隊の指揮官を命じられている。臨時任命であったため短期間ではあったが、当時運用試験中であったネモD型の1機を駆って戦役に参加。MS単独撃墜2機・共同撃墜4.4機、艦艇2隻撃破のスコアーを挙げている。
『第1次ネオジオン戦争』の最中に除隊、以後の公式記録は残されていない。だがその後長きに渡って戦場で幾人にも目撃されている。
(2004.09頃 完成)










おまけ(笑)





MSA-003D-1
ネモD-1型・高機動強襲型
  妄想設定完全補完版
初めに・・・

上の設定はここに書いてある設定から抜粋した短縮版であり、最初妄想設定付き・・・と決まった時に速攻で書き上げたのが、この長ったらしい自己満足妄想でした。

以下の文章は公式・非公式に各サイトから集めたZガンダムのデータを元に再構築した妄想の産物であり、現在公式設定とされているであろう各設定とはまったく違うものであることを先に宣言しておきます。
全て私の妄想の産物ですので、『設定と違う』等の苦情等はご遠慮ください。





時代背景

一年戦争終結(宇宙世紀(以下U.C.と略)0080年)後、ジオン軍は降伏したものの、地球連邦軍に恭順しない旧ジオン軍の残党勢力は数多く残っていた。

U.C.0083年にコロニー落とし作戦を決行したデラーズ・フリートもそのひとつであった。こうした事件を契機にジオン軍残党討伐部隊『ティターンズ』が結成されたのだが、『ティターンズ』は連邦軍内ではエリート部隊として大きな力を持つようになったが次第に増長し、特にコロニー市民に対する差別意識を強めていく。そして30バンチ事件が発生した。
この事件はコロニーに住む宇宙移民虐殺事件であり、そのことの報道統制まで行うようになる。ここに至って、地球連邦に抵抗する勢力は集合し、ブレックス・フォーラ准将をリーダーにエゥーゴを結成、軍事的な抵抗を開始することとなる。だが、『反地球連邦』を標榜しているものの、実際に敵対している相手は『ティターンズ』であった。

『ティターンズ』vs『エゥーゴ』の抗争は次第に激化し、両勢力以外の連邦軍将兵をも巻き込んでいく。だが、結果的に宇宙の連邦軍勢力も大半がエゥーゴに参加しているという状態ではあったが・・・この抗争を『グリプス戦役(U.C.0087年)』という。

この戦いの背後には『エゥーゴ』に武器を供給した巨大軍需産業アナハイム・エレクトロニクス社の暗躍もあった。同社は、同時にティターンズへの武器供給も行なっており仮想敵を失って連邦軍が縮小するのを恐れた同社の思惑に合致したことも、エゥーゴ勢力拡大の背景にあったものと思われる。





部隊編成

『エゥーゴ』は結成当時からその内部に旧ジオン軍残党を取り込んでいた。アクシズやジオン共和国に属せず、正式に連邦軍内に下った者、また名を変えて潜り込んだ者、その多くを取り込んでいたのだ。
『エゥーゴ』結成に伴い、その実行部隊としての戦闘組織は公式・非公式の両面から編成された。前者は連邦宇宙軍の部隊ごと『エゥーゴ』として編入・運用されたケースであり、サラミス級巡洋艦『モンブラン』等正規の艦船部隊がそれにあたる。後者は『エゥーゴ』独自の部隊であり、強襲揚陸艦『アーガマ』等が該当する。
戦後『グリプス戦役』において『エゥーゴ』陣営に参加していたとの資料が多く残されている教導MS部隊の一つ、『第14教導MS大隊』は前者に当たる連邦宇宙軍正規編成部隊である。

同部隊は『デラーズフリートの反乱』によって、1年戦争当時を遥かに上回るMSを運用しながらも、ジオン軍残党部隊が操る旧式MS群に予想以上の被害を被った事が直接の原因となって編成された部隊であり、連邦軍各部隊の多くは明らかに技量の低下が認められたのである。平時における部隊は戦時以上に技量向上があってしかるべきにも関わらず(事故等以外での喪失が発生しないため)、その技量低下は組織としては看過出来ないものであった。(ジオン残党軍の技量が向上しているとは考えられない)
結果、平時における訓練方法の改変が行われることとなった。

その一つが教導MS部隊の設立・改編であり、『第14教導MS大隊』も改編成された部隊のひとつであった。

『第14教導MS大隊』は、旧ジオン公国軍製MSを運用する連邦宇宙軍・仮想敵機部隊『第338独立MS中隊』を母体とした部隊である。
だが、旧式機体を運用していたこと・パイロットの技量が低かったこと・上層部が部隊としてまともに運用しなかったことなどの理由により、部隊としては問題が多すぎた。『デラーズフリートの反乱』を機に、連邦軍内部改編が行われ、ジオン軍残党討伐部隊『ティターンズ』が編成されると同時に、その技能向上・訓練目的としての仮想敵機部隊も改編されることとなる。

U.C.0084年、いくつかの教導部隊を統廃合した結果として『第338独立MS中隊』を母体に再編成され、旧ジオン公国軍製MSを運用する連邦宇宙軍最大規模の部隊『第14教導MS大隊』が編成された。
またその任務上、第1・2中隊は、従来どおりの旧ジオン公国軍製MS(およびその改修型)を運用したが、大隊本部付属部隊として試作MS等の運用試験も兼ねる事となる。
これはMSの性能評価・運用試験を目的とした他の実験機部隊とは違い、その試作機を用いた戦術運用を模索する任務を主としている。(その為配備されるMSは、ある程度量産・正式配備が内定していた機体に限定される。)



部隊の実情

連邦宇宙軍の改編に伴い、大々的に改編された『第14教導MS大隊』ではあったが、この部隊編成を指示したジャミトフ・ハイマンは結果として部隊運用に失敗した。
人員の配置に関し『ティターンズ』優先とした為、他の部隊との軋轢が生じたのである。
これは『第14教導MS大隊』に限ったことではなかったが、『ティターンズ』との直接的な訓練業務に当たる教導部隊に『ティターンズ』より質の劣るパイロットを配備したこと(というより優秀なパイロットは優先的に『ティターンズ』に廻した)、『ティターンズ』の隊員が他の部隊を格下と見たこと(事実組織上は下位組織であった)などにより部隊間の雰囲気は悪化していった。
なにより技量優秀ではあるが、旧ジオン公国軍出身者(および非公式調査によりジオン出身と判定された者)は、その能力・技量に関わらず『ティターンズ』には配属されなかった。

U.C.0086年、『ティターンズ』と『第14教導MS大隊』の確執は、既に当初の目的からかけ離れた部隊間抗争にまで膨れ上ったが、結果として常に険悪な雰囲気の中での訓練が戦技向上につながるという皮肉な結果となった。
この部隊間抗争に拍車をかけたのがブレックス・フォーラ准将と『エゥーゴ』の存在であった。軍内部における権力抗争の結果として教導部隊の指揮系統がジャミトフ配下からブレックスに移ったのである。
この再度の改編により『第14教導MS大隊』はさらに巨大化する。第3中隊の編成と、実験機の運用試験中隊の併合であり、これによりアナハイム・エレクトロニクス社が開発中の機体まで含まれるようになった。(ただし、A・E社開発局の一部局だけであったが)
この第3中隊こそ『アーガマMS隊』の隠れ蓑となった部隊であり、R・ディアスの運用試験も行われたのであった。
 [筆者注:完全な妄想設定ですから・・・誤解なきように・・・(T◇T;)
また『ティターンズ』に配属されなかった技量優秀だが旧ジオン公国軍出身者(および非公式調査によりジオン出身と判定された者)の多くが、この時期に『第14教導MS大隊』に配属されている。



『グリプス戦役』と『第14教導MS大隊』

U.C.0087年、のちに『グリプス戦役』と呼ばれる『ティターンズ』と『エゥーゴ』の政治抗争が表面化した武力抗争が勃発した。

『エゥーゴ』の武力作戦開始につられるように『ティターンズ』に所属するMS部隊の多くは宇宙(そら)に集結したが、ただしこの時期の『ティターンズ』本隊とも言うべきは各部隊はジオン残党部隊掃討作戦を実施中であり、『エゥーゴ』の実働部隊である強襲揚陸艦『アーガマ』を中心とする独立部隊に即応出来たのは『ティターンズ』の指揮下に組み込まれた一般部隊(巡洋艦『ボスニア』他数隻の艦船のみ)と、基礎訓練を終了して『グリプス』に集結した新兵たちだけであった。

過去のいきさつから多くの一般部隊は『エゥーゴ』を支持するような動きを見せたが、あくまでも軍内部の抗争であり、積極的に関与しようとすることはなかった。
『第14教導MS大隊』も同様であったが、上層部の思惑としがらみに捕らわれ、『エゥーゴ』実働部隊に配備する部隊・人員の訓練業務と、一部教官パイロットによる実働部隊への派遣が行われた。
この派遣チームをΔ(デルタ)チームといい、アイリッシュ級巡洋艦のネームシップ『アイリッシュ』に1個小隊(4機)が配備された。だが、この派遣処置は裏で行われたものであり、表面上はあくまでも他の一般部隊に対する教導任務であったため、公式には『エゥーゴ』に参加した訳ではなかった。

A・E社系列の試作MS運用試験も平行して続けられた。
その中には同社内の他局が開発した多くのMSが廻されてきた。公式・非公式共に・・・
(ガンダムMk-UやプロトタイプZガンダムも含まれていた)
大隊本部付運用試験部隊に一つの任務が回ってきたのは、『エゥーゴ』がジャブロー降下作戦を実施している頃である。

次期正式採用MSとしてのMSA-003の再評価と改良点の調査

MSA-003(通称:ネモ)、全般的に『ジム2』を上回る性能を有していると言われているA・E社製MSであり量産を前提としたMSである。現在は先行量産型が『エゥーゴ』実戦部隊に配備されているため、事実上の『エゥーゴ』専用MSとしての感があるが、連邦軍として正式採用されたMSと言うわけではない。
おそらく、この抗争が終結したのちを見越しての性能評価判定ということであろう。現状では無償供与に近い形で『エゥーゴ』各隊に配備されているわけだが、正式採用されないことには企業としては意味がない。それどころか莫大な損失につながるのである。そして、配備された各部隊からの『ネモ』に対する評価は決して高いものではなかった。

元々RX-82/RS-81『ネモ』として1年戦争終結後に次期量産型MSとして開発のスタートした機体であったが、高火力・重装甲を目指した結果ビーム兵器全盛期に突入しようとしている時勢に合わず失敗作の烙印を押された経緯がある。
改修型として機動力向上改修を施した高出力ジェネレーター搭載型RX-82-STI/RS-81-STIや、SEジェネレーター搭載のRS.NF-81-STI-SESといった機体が開発されたが、RGM-79R『ジムU』の登場により大量生産には結びつかなかった。

MSA-003『ネモ』は一度は失敗に終わった火力と重装甲の両立というコンセプトの機体を、RGM-79R『ジム2』の技術の応用と、新装甲材ガンダリウムαの採用によって完成されたMSであった。
当初予定されていた極端なまでに高い出力のジェネレーターを諦め、平均的なMSの出力程度に抑えたこと、在来機とのパーツ共有率を高めることによって生産コストを抑えることに成功している。ただし結果として火力面ではいささか劣る結果となったが、量産型MSに必須の安定性能は増し、高い評価を受けるようになった機体である。

だが『グリプス戦役』は当初予想された戦局とはまるで違った状況のまま推移した。それは次期量産型MS選定の場に混乱もたらす結果となる。
『グリプス戦役』、それは戦争ではなく、ただの騒乱と内紛、ゲリラ戦と局地的な私闘の集合体でしかなかった。両軍共に連邦軍首脳部の主権争いから端を発しただけに、まともな戦いではなかったのである。
この内乱に次期MS開発競争を持ち込んだ各企業体や軍開発局、果ては個人開発のMSに残党部隊まで加わったため、収拾のつかない事態に陥ったのである。次々と投入される試作MS群は、個体としては優秀な機体も存在したが、量産性を考慮したものではなく少数生産または単体製造の機体が多く、そこに次世代MSの必須条件(と錯覚した可変機能)が加わったため、全ての兵器調達計画が白紙撤回されたのである。

統合参謀本部・第二部(兵器調達部門)は、混乱が終結するまで既存のMSのみで対処(RGM-79R『ジムU』の追加発注)し、次期正式採用MSは先送りにしたのである。連邦軍そのものを脅かす脅威ではなく、内紛であったため、統合参謀本部では事態の傍観を決め込み、むしろ次期正式採用機コンペとして捉えていた面があると戦後の資料によって判明している。

この状況化でもっとも危機感を抱いたのがアナハイム・エレクトロニクス社を始めとする軍需産業体であった。この戦乱から手を引けば次期採用からは外される(非公式通知が軍部より通達されていたとの噂が存在した)。しかし次々と新型機を開発・実験投入するには膨大な開発資金を必要とする。A・E社は既に複数の準量産機・試作機を投入していた。
そのため開発機種の整理を行いたかったが、戦局の激化にともない、前線の部隊(ティターンズ・エゥーゴ共に)から増援戦力の追加投入と、改修依頼が殺到したのである。

A・E本社首脳陣が下した判断の一つに現在『エゥーゴ』側に投入しているMSA-003『ネモ』の再評価と改修命令があった。A・E開発局及びテスト部隊が再評価したMSA-003『ネモ』の性能評価と、『第14教導MS大隊本部付運用試験部隊』が下した再評価はほぼ同じ評価であった。

概ね良好、ただし今後の改修目標として若干の機動性の向上を望む。

以上であった。
当初懸念された火力面に関しては特に不足を感じなかったようである。むしろ機動性向上の方に改修項目が集中していた。『第14教導MS大隊』の派遣部隊であるデルタチームの評価も同様であった。だが、他の前線部隊からの要望は違った。彼らからは火力の向上を第一とする要望が届いていたのだ。問題は運用方法とパイロット錬度であった。

『グリプス戦役』に参加した初期の部隊の内、『ティターンズ』にしろ『エゥーゴ』にしろ多くの部隊が(エース級のパイロットが居ても、部隊の能力としては)一般部隊に比べて明らかに錬度の低い部隊ばかりであった。また一部民間人・一般軍属・各研究機関までが戦闘に参加した始末である。
一連の戦闘の中で、十分な錬度を有していた部隊といえば、『ティターンズ』『エゥーゴ』共に極一部の部隊だけであった。『アクシズ』に参加した旧ジオン軍残党勢力も最新技術・戦術情報から離れていたこともあり、初期の段階では残念ながらそれほど高い戦力とはなりえなかった。(他にMS自体の性能差も関係していた。)

現実に戦闘における主戦力となった『エゥーゴ』のアーガマ隊にしても、実際の働き程には高い戦力を維持していたわけではなかったのは戦後の資料からも明らかであった。
『グリプス戦役』自体が局地的な紛争と個々の戦闘の連続、戦略とはかけ離れた戦術無き戦闘の集合でしかなかったのである。そんな戦闘に参加した『エゥーゴ』パイロットの多くが血の気だけ多く理想主義的で、たいして戦闘教練を受けていない若手士官たちであった為、機体性能を十分に引き出すことが適わなかったのも仕方ないところではある。『グリプス戦役』後半は『エゥーゴ』=『連邦軍』となったため他の一般部隊も参加したが、まともな部隊であれば軍内部の内輪揉めでしかない内紛に参加しようという部隊はほとんど居なかった。

敵対する『ティターンズ』側にしても同様であり、創設初期の部隊は『一年戦争』や『デラーズフリートの反乱』に参加した実戦経験者が多く、非常に錬度の高い優秀な部隊が多かった。だが『グリプス戦役』時には定期異動や、『ティターンズ』そのものの活動に反感をもった多くのパイロットが配属願を出すケースが多かった。『ティターンズ』の選抜方法も地球出身者を優先したため、訓練以前に宇宙(そら)というものに抵抗感のあるものが多かったのも原因の一つであった。

次に実験投入したNTや、擬似ニュータイプたる強化人間の参戦も戦場の混乱に拍車をかける要因となった。彼(彼女)らの多くが、能力的に優れたパイロットであるとは言えなかった。個々の能力に優れていたとしても、組織としての歯車としては有機的に機能せず、其の上各勢力が戦力の中核としてNTや強化人間を配置したため、結果として部隊の能力が低下したケースが非常に多かった。

『グリプス戦役』後半、『エゥーゴ』として参加した今まで情勢を傍観していた一般部隊各隊が参戦後(主にメールシュトローム作戦)、急速に戦場を制圧していったのは当たり前のことであった。





『ネモ改修計画』と『タクティクス・Δ(デルタ)』

上記のような状況に鑑み、MSA-003『ネモ』改修計画は2本立てで進行することとなった。
目的は次期正式採用機としての地位確立。
方法としては各方面からの試験結果・意見を取り入れる形での改修であり、1つ目が既存機体の改修計画。2つ目がジェネレーター強化を含む新規開発機体であり、『ネモU』計画としてプロジェクトが進められることとなる。
『第14教導MS大隊』が担当したのは前者のほうであった。

U.C.0087年8月、異例の速さでロールアウトしたいくつかの機体のうち、2種3タイプ8機の機体が『第14教導MS大隊』に回されてきた。MSA-003Cと、MSA-003Dである。(C.Dは正式な機体番号ではなく、A.E社内での暫定番号。後に正式化)
これらの機体は部隊内で評価試験が行われた後、最小限のサポートチームをつけてデルタチームとして前線部隊に送り出されることとなる。だが、軍内部での派閥勢力の変化から大規模な変化が起こった。つまり戦隊単位としての前線投入である。次期制式化を目指し実戦での評価と戦果を欲したA.E上層部が大規模な派遣チームの編成と出撃を促したのである。
これが『第14教導MS大隊本部付中隊派遣隊(デルタチーム)』とアイリッシュ級巡洋艦『ケルティック』を中核とした機動部隊であり、通称『タクティクス・Δ(デルタ)』と呼称された。(当然非公式混成部隊である為、連邦宇宙軍の艦隊編成上には存在しない任務部隊である。)

『タクティクス・デルタ』によって運用・投入された機体は現在運用されているタイプ(Aタイプ)と、その改修型(C・Dタイプ)で編成された。
改修ポイントは可能な限り早期に、開発コストを抑えつつ既存のシステムを利用して性能を向上することであった。そのため大規模改修が必要と判断された火力増強は携行火器強化案のみとし、ジェネレーター出力向上を含む改修は『ネモU』開発チームのみとした。
変わりに機動性向上を狙った改修にポイントを絞る。これには既存の、そして開発中の他のMSのシステム及びデータを利用することにより短期間で改修することとに決定した(無論開発コストを抑えるためである)。
こうして完成した機体がCタイプ(正確にはC-1・C-2タイプ)とDタイプである。
以下に簡略に各機体の説明をする。

Aタイプ
『グリプス戦役』で早期に『エゥーゴ』陣営に配備された量産型MS。既存の『ジムU』に比べ、高いレベルで纏められた汎用機体であり、量産性を考慮したガンダリウムアルファ系合金を装甲材に採用した機体。評価としては非常に優秀であったが、前線部隊からは火力と機動性の向上を求められた。

Bタイプ
各運用試験部隊で評価・試験された本来の量産モデル。Aタイプが先行量産を急ぐあまり簡略化された部分も作りこまれ、次期制式量産MSのコンペに参加させる予定だったタイプ。

Cタイプ
『グリプス戦役』の影響により制式採用コンペが延期、その間に先行運用部隊(エゥーゴ各隊)からの要望によって改修を余儀なくされた機体。Bタイプをベース機とし、全般的な機動性向上と、各部センサー強化・増設を合わせ操作系の向上に努めた機体である。Aタイプで採用されたガンダリウムアルファ系合金をそのまま採用したC-1タイプと、生産コストが上昇するのを覚悟した上で採用に踏み切ったガンダリウムガンマ系合金を使用したC-2タイプの2種類が存在する。
実際の運用試験結果としては、C-2タイプは価格上昇に見合うだけの性能差は得られなかったという。

Dタイプ
新規開発・大規模改修が認められなかった開発チームがC-2タイプをベースに各部(主にバックパック・脚部)を換装式のオプションパーツ群を用いて出力系・推進系の向上を狙ったタイプ。
用途別に特化させることによってカスタム化し、特殊状況下での運用を前提としたタイプとして開発された。そのため少数生産用であり量産性を考慮していないが、開発期間短縮のため開発済みの各システムが意図的に採用された。このため他のMSで採用されたシステム及びパーツが多用されている。
『グリプス戦役』後半に実戦投入されたDタイプは強襲用タイプ(D-1タイプ)であり、1機だけが運用されたがパーツは3機分用意されていたという。ベースになった機体はネモC2タイプ試作5号機である。
主にバックパックの換装のみに留められたタイプであり、MSN-00100(通称:百式)で使用されたウイングバインダーの余剰品を再利用するという簡易改修でありながら、予想以上の機動性向上につながった。
その他に大型ブースターパック装着型(D-3)や、強襲偵察型(D-4)・対ミノフスキー粒子型電子戦機(D-8)が計画されたが、実戦には間に合わないうちに開発中止された。





機体塗装

ネモは主にエゥーゴにて運用されたため一般的にグリーン系の塗装、所謂『エゥーゴ・カラー』に塗装されていると思われる場合が多いが、この塗装は『グリプス戦役』時のエゥーゴ用機体にのみ採用された。圧倒的にグリーン系が多いが、戦後は別カラーに塗り替えられている。
B型・C-1型は白地に赤塗装の所謂『ジム・カラー』によって塗装されている。これは明らかに連邦軍次期正式採用MSの座を狙っての塗装であり、そして装甲材質にガンダリウムガンマ系を用いたC-2型・D型を白地青塗装(ガンダム・カラー)にしたことも一部に反感をかったが概ね好評であった。





『タクティクス・Δ』の戦歴

特別任務部隊・デルタチームを支援する艦艇部隊として『エゥーゴ』所属のアイリッシュ級巡洋艦『ケルティック』と、連邦宇宙軍第2軌道艦隊・第26戦隊に所属する2隻のサラミス改級巡洋艦『ガテマラ』『アンティグア』により編成された遊撃部隊は、搭載するMS部隊の名をとって『タクティクス・Δ(デルタ)』と名付けられた。
MS部隊は当初巡洋艦『アイリッシュ』に派遣されていたデルタチームを基幹とし、MSA-003C・Dタイプの運用試験機を加えた中隊(2個小隊編成+1機)と、『ガテマラ』『アンティグア』の両艦に搭載されている第701MS大隊第2中隊のMSA-003Aが8機(各艦1個小隊4機づつ)で編成されている。
任務上運用試験の他に次期制式量産機としての座を獲得すべくそれ相応の戦果を求められた為、かなり強引な作戦展開を要求された。その結果が『メールシュトローム作戦』や対ネオジオン戦争(対アクシズ軍)における一連の遊撃作戦活動である。逆にこの『グリプス戦役』の最終局面となった本作戦に参加出来たことこそが天佑であり、不参加であればこの後の『ネモ』系列の開発は全て終わっていたかもしれない。





次期正式採用機

『グリプス戦役』の終了は連邦軍同士の内戦の終了であり、『(第1次)ネオジオン戦争』は対外戦であった。
このため、延期になっていた次期正式採用MSコンペが再開されこととなる。
A.E社側では『メールシュトローム作戦』における一連の実戦実績も含めてコンペに乗り出す。投入機体はC-1及びC-2タイプ(一連のDタイプ・換装パーツ群は必要に応じて装備できるオプションパーツ・システムとして説明)の2種。
対抗馬は『ジム3』『バーザム改』その他といった機体が存在したが、結果的には『ジム3』との一騎撃ちとなった。
個体性能では同等か、やや上の評価を得られたが、2つの点で足を引っ張ることとなる。価格と政治的理由である。
1つが『ネモ2』計画を含む開発サイドでの混乱と乱開発、それに伴う価格高騰であり開発費まで含めた総トータルで『ジム3』より調達費が若干上回る結果となった。
A.E社側では性能に対し許容範囲内の価格差と判断したが、2つ目が致命傷となった。
ネオジオンへのA.E社MSの流出である。
それでも証拠のない噂であり他社が流した流言ではあった。あったはずなのだが、だがそれは事実であった。ネオジオンで運用されているのが目撃された機体・・・『シュトルム・ディアス』
『グリプス戦役』におけるA.E社のシンボル的MS・リックディアス。その改修型の機体流出はもはや致命傷であった。
『ネモ』はその性能とは関係のないところで敗北したのだ。





『ネモ』その後・・・

地球連邦軍次期正式採用機は『ジム3』に決定した。
だが、決定したからといって、今日明日に全てが変わる分けてではない。現に『エゥーゴ』に配備・運用されている『ネモ』は多数に及ぶ。その全ての機体を『ジム3』に変更することは予算の面から言っても不可能であった。しかも『ネオジオン』との戦争中である。
『ジム3』は当面の主戦線が宇宙(そら)から地上に移ったのに合わせ、主に地上部隊から配備されていく。当面の軌道艦隊配備機は『ネモ』と『ジム2』のままであった。
『(第1次)ネオジオン戦争』終結後、主に膨れ上がった軍事費を抑えるべく軍備縮小の方向で全軍の見直しが行われた。
その一つに各コロニーの防衛をコロニーに負担させようという動きがあった。地球連邦軍が派遣・配備させていた兵力を自治体に任せるというものである。一部の者は反対し軍事力は抑えておくべきだと反論したが、財政的危機がこの法案を可決させることとなる。
コロニー自警部隊に配備させる艦艇・MSは連邦軍から売却させるという方法が法案の可決に向かわせた。
主に売却された兵器は概して旧式機が多く、その中に余剰機体となった『ネモ』も含まれていた。売却の際に各部は再調整されたが、機体の多くが実戦経験を積んだ機体であったため、運用実績は良好であっという。これはその後のもA.E社がサポートし続けたため、貴重な運用実績データを長期にわたって収拾し続けることが出来た利点もあった。
さらにU.C.0093年頃には新型MS『ジェガン』配備時に、この配備を拒否するコロニー自治体も存在した。むしろ『ネモ』の延命化処理として機体の再改修に乗り出すこととなる。
このときの改修内容がコロニー周辺空域防衛用としての機動性の向上であり、あの『ネモD型』で得られたデータの活用であった。
改修された機体は全機既存機体改修・増加ブースター装着型として『E型』と命名された。
装甲強度を除けば『E型』は『ジェガン』との性能差は殆どなかったという。




『ジャイケル・マクソン少佐』と『タクティクス・Δ(デルタ)』

U.C.0080年、一年戦争終結後、ジオン公国軍残党部隊の一翼として活動していた戦艦『グワリン』とその所属MS部隊は、本国を脱出した研究機関の試作MS運用試験部隊の間接護衛として暗礁空域に展開していた。
連邦軍の残的掃討部隊との偶発的接触により開かれた戦端は『グワリン』MS部隊のみならず、試作運用試験中のMAを護衛部隊ごと壊滅的打撃を与えた。
事実、この暗礁空域の戦いによりジオン公国軍残党部隊の活動は一時的に終息したほどであった。
この戦闘に参加したジャイケル・M少佐は機体被弾により母艦への帰還が不可能、戦死となったと記録に残されている。
だが乗機が生残性の高いMS−14系の機体であった為、戦闘から41時間が経過した時点で漂流中のコクピットブロックが民間航路上で定期貨客船によって回収された。
この時点でパイロットは酸素欠乏症により衰弱死しているものと判断されたが、奇跡的に生存していたという。いや、回収されたこと事態が奇跡的であった(*これぞご都合主義というものであるw)
意識不明のままサイド6に入港後、貨客船から病院に移された少佐は意識回復後軍付属病院に移送、取調べの日々が続いた。
戦後の軍事法廷において有罪判決が可決、軍刑務所に送られたが僅か1年ほどで仮出所されている。本来ならありえない事態であったが、次々に送り込まれる旧ジオン軍戦犯者たちに軍刑務所の施設が追いつかなくなったこと、また多くの戦犯者が比較的罪状の軽い者たちであった為、異例のことではあったが軽微判決を受けたものの中から順次仮釈放が行われた。
なによりこの当時、多くの若い労働力を無為に留めて置く事は戦後復興においてマイナスと考えられたのである。

仮釈放されたジャイケル・M元少佐はかつてのツテを使いアナハイム社に接近する。旧ジオン製MSの調査研究の面から、かつてのテストパイロット経験が有用視されたのである。
連邦製・ジオン製・新型旧式問わずあらゆる機体を集め、データの収集を目的とした部門への配属であり、その為A.E社所属のまま連邦軍に出向することとなる。
民間各社からの出向要員を集めた部隊がいくつか編成され、彼が配属されたのが『第338独立MS中隊』であった。出向とは言え、軍組織に組み込まれる都合上階級が必要であり、大尉待遇が与えられたが正式な階級ではない。
その後軍内部での大規模な組織改編により『第14教導MS大隊』改編の際に正式に軍入隊、大隊本部付運用試験部隊に配属された。この時、出向員の多くが軍に編入・配属された件に関して軍と各企業の間で一悶着があったというが、当の本人たちには拒否権もなにもなく強制的であったという。裏取引があったとも言われているが真相は謎である。

『グリプス戦役』においては武力衝突以前から巡洋艦『アイリッシュ』所属として派遣されたが、既に肉体的に第一線級パイロットとしてはピークを過ぎており、デルタチームの副長兼教官要員を勤めたが、開戦時には本部付として原隊に復帰していた。
その後は『ネモ改修計画』に参加、C・Dタイプの開発スタッフとして従事するが大規模派遣チーム・『タクティクスΔ(デルタ)』編成時に再び前線に戻ることなる。
当初『タクティクスΔ(デルタ)』参謀として派遣される予定であったが、直前になってデルタチーム(MS中隊)の指揮官として赴任。前任者が戦闘中に負傷・後送されたためであった。
乗機は中隊付として配備したネモD型。開発時に専属パイロットをしていたため、急遽予定外でD型の部隊派遣が決定した。(最初の予定では全機C型のみで編成予定)
その為、他の機体と違い機体の塗装変更は行われなかった。1機しか搭載していない機体の上、外観上での識別が容易であるため塗装変更は必要なしと判断したらしいのだが、一説には強行に塗装変更に反対したとの記録も残されている。(前線配備されたC型は全機エゥーゴ・カラーに塗り替えられた)

『グリプス戦役』における活動期間は極端に短い。最初に参加した戦闘が『グリプス戦役』の最終局面メールシュトローム作戦と、その後に続く一連のグリプス攻防戦であった。
撃墜戦果:MS単独撃墜2機・共同撃墜4.4機、艦艇2隻撃破
指揮官として中隊を率いた結果、戦果の多くは指揮下の機体によって挙げられたものであり個人撃墜数はさほど多くは無い。
『(第1次)ネオジオン戦争』時には出撃も殆ど無く、旗艦からの指揮に徹していた。大規模戦闘が起こらず、殆どが小規模な遊撃戦・遭遇戦であったためである。
『(第1次)ネオジオン戦争』の序盤戦、本格的に戦闘が開始される前に第14教導MS大隊に戻された。指揮官更迭との噂も流れたが、実際には次期正式採用MSコンペが再開されたためである。
半年後、連邦軍の人事ファイルから『ジャイケル・マクソン』の名は削除された。公式記録には除隊と記されているが、その後も戦場で彼の姿はたびたび目撃されているという。